オンボロアパートの擦り切れた畳に寝転がり辿りついた結論をすぐさま行動に移した。


 電車に乗り、駅に着いて、ふっと別の考えに至る。


 あの馬鹿のことだ、もしかしたらまだ好きじゃないとか、わけのわからん思考回路に陥っているかもしれない。


 そうなると、抱きしめることも、当然その先の行為もできないわけだ。


 でも、とりあえず友人としてでも構わないから少しの時間だけでも一緒に過ごしたい。


 そう、結局俺は水野に会えないことに限界を感じていたのだ。


 ただ、会いたかったのだ。


 いや、会って色々したいが、とりあえず、会えれば。


 手土産に、コンビニで水野のお気に入りのオレンジゼリーと牛乳プリンを買う。


 これさえあれば、ちょっと立ち寄った程度で家に上げてくれる。


 怒ったり、この間の話を持ち出すのはよそう。


 連続ダメージが続いて、マイナスイオンはゼロ。


 三回目の攻撃は耐えられる保証はないから、色好い返事が来るまでは沈黙を通そう。


 家を出た当初より、トーンダウンしながら呼び鈴を押す。


 返答なし。


 右に回って窓を見ると、暗いまま。


 これは出かけているのかと、塀にへたり込んだ。


 自分でも気付かないうちに緊張をしていたらしい。


 合鍵はあるが、別れ話の最中にアポなしに勝手に家に入るのはマズい。


 もう、十時過ぎだ。


 仕事なのだろうか、それとも飲み会だろうか、友人と遊んでいるのだろうか、それとも…………