「……また、失敗したんだな」
「せっかく私たちが譲ってあげたのに、救いようがないわね」
俺という人間はとにかくついていないらしい。
二人そろってのところに出くわすなんて。
「機嫌がすこぶる悪く、お二人に構う余裕はないんで」
「そう、気を落とすな。言っただろ?気長に待てって。早いマリッジブルーさ」
「……別れ話を持ち出されても、気長に待て、って高杉さんは言うんですか?」
寝不足の顔で睨み付けると、高杉さんは目を見開いた。
「あらら。振られたの?また何で、水野ちゃんは別れ話を?」
宮野は確実に面白がっている。
「好きかわからなくなったらしいですよ。馬鹿なくせに考えすぎて、時々ぶっ飛んだこと言う女なんで」
「へ~。愛されてる自信があるわけだ」
「世迷言は何度か経験があるんでね。毎回、うんざりですよ。馬鹿と付き合うのは」
「おいおい。いつになく辛辣だな」
馬鹿な女だから馬鹿と言ったまでだ。
好きかわからなくなった?
愛のない結婚をするつもりはない?
三年以上付き合ってて、何を言ってるんだ。
好きでもない男に、好きだと囁き、肌を重ねてきたとでも言うのかよ。
本当に馬鹿らしくて取り合う気にもなれない。