大丈夫だ。


 すぐに結婚できなくても、じっくりこれから時間をかけてでも、水野に結婚を考えてもらえるようにしていけば良い。


 ここで終わりじゃない。


 むしろ、ここで冷静で寛大な態度を見せて器のでかさを見せるべき。


 そう自分に言い聞かせて、まっすぐ水野を見つめ返した。



「……俺との結婚は考えられないんだな」



 水野から聞きたくなくて、自分から結論を切り出す。



「ごめんなさい。しっかり考えて出した結論。私は……」



「わかった。別に何が何でも今すぐに結婚したいと思ってるわけじゃない。お前がその気になるまで待つ」



「違う。別れて欲しいの」



 きっぱりとした口調に俺は何を言われたのかがわからなかった。


 頭で理解するより先に、身体が反応し強張る。


 元より備わった冷静さを総動員して、言葉が出ない口から何とか言葉を出す。



「べ、別に、そこまで思い詰めることはない。結婚なんてするにはまだ早い年だし、罪悪を感じる必要なんて……」



「違うの。申し訳なさとかじゃなくて、そういう理由じゃないの」



 結婚を断られるどころか、別れ話。


 これだけで、終わりそうにないという直観が働く。