もしかしたら、救われるかもしれないと、とりあえず指輪の受け取りを目撃されたところから昨日のやりとりまでを話してみた。












 しばしの沈黙のあと、二人は同時に酒の入ったグラスを置いた。



「重い。重すぎる……」



 どこかで聞いたセリフだ。



「仕方ないだろ。俺は向こうの要望を取り入れただけだ」



「榊田だって、わかってたんだろ?それはただ断りたくて並べただけだって」



「それはそうですけど」



「結婚を躊躇している相手に、その重すぎる愛でさらに結婚を遠ざけるわよ」



 あの時は、水野の言い分に売り言葉買い言葉で言い返していたが、帰って振り返った時に重い男にどっぷりとなっていたことに気付いたが、時すでに遅し。



「あの、良かったら……」



 深刻な話をしている最中だと言うのに、空気の読めない女が話かけてきた。


 何故、どうでもいい女運だけはあるのだろう。


 本命の女運が欲しい。


 そんなことを思いつつ、適当にあしらうと高杉さんはからかうように笑った。



「しかし、お前も断られるのがわかってて良くプロポーズできたな。断られるショックを知らないやつだからできる業か?」



「断られることに慣れてたからですかね」



 慣れたというより、恒例化しただけか。



「あんたらしからぬ言葉。彼女の告白が始まりなんでしょ?」



 片思いしていた時間より恋人として過ごした時間のほうがようやく長くなったというのに、また冬の到来か?