そして、指輪の仕上がりの電話が留守電に入ったのは水曜日の昼。
そして、水曜日の夜、宮野に腕を引っ張られ歩く俺。
「どうして、着いてくる?もう用はない」
「あら?しっかり仕上がってるか見てあげようと思ったのに」
さも当然とでも言うように、宮野は真っ赤なヒールを響かせた。
宮野のセンスの良さは仕事だけでなく、それこそプライベートで発揮されている。
自分に合うものを知りつくし、相手に合うものも瞬時に判断できる天性の才。
「野次馬女」
だからこそ、ネタにされるのを我慢して宮野に頭を下げた。
「あんた、そんなこと言って良いの?指輪の知識なんてないくせに」
そして、最後までその頭は上げることができないらしい。
「俺が悪かった。よろしくお願いします」
最高のものを水野に贈るためになら、馬車馬にでも水牛にでもなってやる。
「ふふっ。任せなさい!」
ねだられ嫌々ながらも宝石店に入る男と高いの買わせるぞと意気込む女の図で店へと足を踏み入れる。
この姿をまさか、反対車線から水野が見ているなんて思いもしなかった。
そんな間の悪いことがあるなんて。
当然のことだが、予想できるはずもなかった。