「……榊田。あんた、祝いの言葉もないわけ?」
「ああ。忘れてた。おめでとう」
そう言いつつ、水野の皿にアップルパイとアイスを乗せてやる。
ありがとう、と照れたようにはにかむ表情は上原と違って気味悪くない。
節約を心がける俺も水野がいる時だけはデザートを頼むのはこのせいだ。
「……相変わらず、俊は小春ちゃん一辺倒だな。俺たちの結婚話が霞んだ」
「ほ~んとに、二人はいつまでもお熱いことで」
「ああ。お前たちと違って倦怠期知らずだ」
仲が良いのに越したことはないし、否定すれば否定するほど面白がるこいつらの性格は嫌というほど知っているから開き直るのが一番。
「小春もこんな重苦しい男と良く付き合ってるわ。あんただけは絶対にごめんだわ」
「だから、お前なんかお呼びじゃないんだよ」
「今日は朔と広也君のお祝いしないとね。夕食はいつもより豪勢に」
瀬戸の一声に水野は嬉しそうに頷いた。
さっきから、こいつらは姉妹のように息がぴったり。
俺が一人孤立しているように思えてならない。
まぁ、自分のことのように喜ぶ水野が見れたのだから、今日の夕食は祝いに奢っても良い。
何だかんだ言いつつ二人の結婚を嬉しく思える俺は本当に丸くなった。
顔も性格も丸い水野といたら、そうなることは必然。