俺は大学時代の反省を活かし、愛妻家の部分を徹底的に職場では隠している。
職場の人間、中でも宮野に真実を知られたら、それはあっという間にこの広い会社へと拡散し、俺はからかい続けられるのだから。
「意外と長いな。それだけ付き合ってると欠点も見えてくるだろう?」
「友達付き合いもそれなりですからね。欠点は、過度のブラコン」
仁なんて、シスコン野郎で十分だ。
「ブラコン?」
「七歳上の兄貴にべったりで、兄貴のほうも妹溺愛で始末に負えない」
「私たちと同い年のお兄さんがいるのね。あんた、そのお兄さんに憎まれてるでしょ?」
「ご名答」
俺は感情のない拍手を一応してやった。
「だって、あんた可愛げがないもん。同い年だからわかるぅ!可愛い妹を誑かした悪党よぉ、あんたはっ!」
「酒が回ってきたな……明日、二日酔いで約束反故とかありえないからな」
「明日というか、今週は無理かなぁ~?」
「はぁ!?」
まだ、俺をいたぶるつもりか。
昔の俺なら間違いなく絞め殺している。
「ほら~仕事がたまってるしぃ?あんたがもっと頑張るって言うなら話は別だけ……」
「わかった。やる。その代わり、最高のものを見つけろ」
「あら?意外に力入れてるのね」
俺が嫌がる顔を楽しみにしていた宮野は拍子抜けしたのか、あっさりと、任せなさい、と日本酒を一気に飲み干した。
あぁ、今日も俺はこの酒乱女の介抱か……
高杉さんの奢りだし、たくさん食べて備えなければ。