「で、私の美貌にぴくりともしないあんたが結婚しようと思っている子はどんな子なの?とりあえず、写真と彼女の好きなところとなれ初めから」
「ここの奢りとシュークリームで契約したんだ。そんなこと話す謂れはない」
「指輪選ぶのに、相手を知らないでどう選ぶのよ?それに話さないなら降りても良いのよ私は……」
くふふ、と俺をいたぶる三日月の目と口。
やっぱり、人選ミスだったか。
しかし、宮野なら絶対に良い指輪を見つけてくれると確信もある。
俺は泣く泣く降参した。
「わかりました。写真からですね」
俺はカバンから取り出し差し出す。
「あら、携帯じゃなくて現像された写真。あんた、こんなの持ち歩いてんの?」
「違う。焼き増ししたのをちょうど今日、受け取っただけです」
「まぁ、あんたのことだから、そんなことだと思った。ふーん、なるほど。私と正反対って感じ」
「その通り。料理上手で、気配り上手、わがまま、おねだり一切なし、仕事にも熱心で、酒癖も悪くなく、厚かましくない。つまりは俺の手を煩わせない」
「……私に喧嘩売ってるのかしら?榊田くーんー」
「好きなところだろ?答えた」
「なるほど!榊田が結婚なんて言い出すから不思議に思ったが、納得だ。で、なれ初めは?」
俺たちの不穏な空気を断ち切り、続きを促す高杉さん。
「大学の同級生」
「いつから、付き合いだしたのよ?告白は?まぁ、それは彼女からか」
「大学四年ちょい前。付き合いだしたのは向こうからの告白。もう良いでしょ?」
本当のことを言っているとは言えないが、嘘ではないからとりあえず良いだろう。

