「はぁ?お前、宮野さんを知らないのか?」
「顔しか知らん」
「お前って言うやつは。あの美貌にあのナイスバディ―!男の憧れだろ!その人にマンツーマン。手取り足取りの指導……もう、たまらんっ!!」
妄想を繰り広げる同期に俺は呆れ、それを隠さずに、くだらんと酒を飲む。
「榊田……あの身体を見て何も思わないのか?あれだけ、整った宮野さんを見てムラムラとか……」
「あるわけないだろ。馬鹿馬鹿しい。色めき立つ男どもが不思議で仕方がない」
客観的に見れば、不思議なことなど何もない、とこの時は思った。
だが、水野以外に目を向けられない俺には不思議で仕方がないというわけだ。
今にしてみれば、客観的にもありえないが。
「そういうのに限って、やらしい目でみるのよねぇ~」
背後からの女の声に俺が振り向くのと、同期が宮野さん、と叫んだのは同時。
そして、俺へずいっと身体を密着させ、顔も近づけてくる。
「君が、榊田君ね。なかなか良い男じゃない?お姉さんが一晩遊んであげようか?」
俺の髪の毛を搔き上げ囁く宮野。
豊満な胸が押し付けられる。
そこで俺はその魅力にやられ一発KO……なわけがない。
「宮野さん。不愉快なもの押し付けるのやめてください。それに酒くさい息を吹きかけられるのも不愉快です」
「…………」
「それにその香水、トイレの消臭剤の匂いに似てるんでやめた方が良いですよ。まぁ、密着すれば匂う程度なのでマナー違反ではないので本人の自由ですけど」
こういう挑発的行為は慣れている。
俺を落とそうと色仕掛けなんて昔からのこと。

