「……高杉さん。どうして、ここにいるんですか?」



 雑用を終え、先にいそいそと居酒屋に向かった宮野を追いかけると、そこには二人で豪快に飲んでいる男女。



「榊田。俺の許可なくして人の女を借りておいて何言ってる?」



 からかうような笑いに俺はため息を吐き、高杉さんの隣に座る。



「俺は趣味悪くないですから、こんな女と一晩いたって何も起きやしないですよ」



「あんた、私が先輩だってわかってる?」



「先輩らしいところ見せてから言え。おしゃべりめ」



 もう職場を離れれば、敬語なんてさよなら。


 宮野の酒癖の悪さで俺がどれだけの迷惑を被ったかは語るも涙聞くも涙だ。


 高杉さん自身、この酒癖の悪さに恐れをなし、普段は俺に押し付ける癖にこういう時だけ都合よく同席するのだから、ちゃっかりしてる。



「おいおい。榊田。それは冷たいだろ?京香に話して、俺にそんな面白……いや、大イベントを話さないなんて」



「ここは高杉さんの奢りで良いですね?もちろん」



 低い声で睨み付けると、肩を竦め罪のないような顔をした。


 高杉さんの欠点はこの野次馬根性。


 歩く情報収集機と呼ばれる、宮野から伝染したに決まっている。


 高杉さんは、このあり得ない宮野の大学時代の同級生であり、同期。


 そして、さらにあり得ないことに宮野の恋人。


 こんな恐ろしい女と付き合う人間がいるとは。