弱みを握った宮野はいつも以上に俺を馬車馬のごとく扱う。
睨み付けると、あら~私に頼みごとがあるんじゃないのぉ~と鬱陶しく抱きついてくる。
まさにパワハラにセクハラだ。
俺はその鬱陶しい身体を引き離す。
「買ってきたんですから、約束は守ってください」
一応、先輩だ。
仕事面では多少だが尊敬できる部分もある。
だから、仕事の時だけは敬語を忘れないでいてやる。
「まぁ。あんたのおごりで飲めるし、とっておきの店を紹介してあげるわ。しかし、あんたがね。ぐふふ…」
「そのとっておきに続く名詞が居酒屋ってことはないでしょうね」
その時は、先輩だろうと知ったことではない。
首をへし折ってやる、日ごろの恨みと一緒に。
「安心しなさい。とっておきのエンゲージリングがあるお店をね」
それだけ言うと、昼休みを潰して買ってきた俺の努力のシュークリームを一分もしないうちに胃袋へと収めた。
二つとも。
もしかしたら、俺の分かもと思った俺が馬鹿だった。
昼休み終了まであと5分。
弁当箱を開けた瞬間に、パシリもセクハラも忘れられるのだから、マイナスイオン恐るべし。