身支度を整えた水野をベッドの中に招き入れ、そっと抱きしめる。


 髪を撫でていると、水野がぽつりと零す。



「……どうしてわかったの?」



 何の事だかさっぱりわからん。



「今日は一緒にいたい、ってどうしてわかったの?」



「………………いや、わからなかった」



 今日はこいつに虚を突かれてばかりだ。



「そうなの?でも、嬉しい」



 胸にぴたりとくついってくる水野に俺は何も言えない。



「明日、榊田君のお弁当作るから」



「寝起きが悪いんだから、無理すんな」



 一度家に帰っての出勤。


 俺の朝はいつもよりも早くなるから水野には無理な話。



「卵焼きもちゃんと入れるから。こうして一緒にいてくれるんだもん、早起きだってできちゃうよ」



 頑固者の水野のことだ、もう何を言っても無駄。


 目をこすりながらも、渾身の弁当を俺に手渡して見送ってくれるのだろう。



「なら、もう寝ろ」



 これ以上話していると不本意な形で伝えてしまいそうになる。


 結婚しよう、と。


 ちゃんとした形で伝えたい。


 衝動的に口を吐いた言葉だと思われたくない。



「うん。おやすみなさい」