「う~ん。付け心地は?」



「どれも変わらない」



 視力検査が終わると、今度はメガネの試着が始まった。


 水野はじっと俺を見つめ、うんうん唸る。


 こんな風にまじまじと見られると、緊張してしまうのは何故だろうか。


 そんなことをつらつら考えている中、水野は次々にメガネを俺へとかけていく。


 そして、ようやく首を満足げに頷かせ、俺は緊張から解放された。



「榊田君はあっちで待ってて。誕生日までは内緒」



 お役目ごめんと言わんばかりに追い出された俺は、夕食をどこで食べようかと、デパートの案内板を眺める。


 デパートよりも外でもっと良いものを食べるか。


 名案だと思ったがこの辺りの店なんか知る由もなく。


 そんな中、女二人組に声をかけられた。


 これから夕食ですかと。


 これ幸いと、おいしい店を聞いたらペラペラと話し始める二人。


 要約するとオシャレでおいしくて穴場な店が少し離れたところにあるらしい。


 案内しますという申し出を断り、その場をさっさと離れる。


 こんな風に二人で外食なんて、付き合い初めの頃以来かもしれない。


 ファミレスとかラーメン屋はあるが、こういった機会はまったくなかった。


 良し今回は奮発するぞと、メガネ屋に戻ると水野を一番に視界に捉える。


 水野は一人ではなかった。


 誰かと話している。


 店員ではない女と。