昔の予感が確信に変わる。
俺は水野に振り回わされ続ける。
マイナスイオンに溺れ続けると。
俺の世界の中心は水野であると。
それが自分の幸せと認めざるを得ない。
妙な敗北感を感じなからも、嬉しく思う自分に呆れてしまう。
俺のそんな気持ちなんて知らない水野は微笑む。
「お父さん。私が選んだ人はとても優しくて誠実な人です。何より私は彼を心から愛しています。だから結婚を認めてください」
お願いします、と水野が頭を下げたので、慌てて俺も頭を下げる。
空気はいつの間にか穏やかなものに変わっていた。
これこそマイナスイオンマジック。
「ほら、お父さん。小春は心底俊君に惚れているのがわかったでしょ?これ以上粘る
と駆け落ちされるだけよ?」
楽しそうに笑うおばさんとは対照的におじさんは黙ったまま沈黙が続いた。
しばらくして、おじさんは俺へとひざを向けて深々と頭を下げた。
「……至らない娘ですが、私にとっては本当に大事な娘なんです。だから娘のことを大事にしてやってください」
よろしくお願いします、と最後は涙で声が掠れていた。
その姿は仁の寂びしそうな姿とどこか重なって、水野はおじさんにとってもかけがえのない存在だと知らしめた。
でも俺にとっても水野はかけがいのない存在。
だから、奪わせていただきますと俺は気持ちを込めて深々と頭を下げた。

