「……おじさんに連絡を取ってくれたって聞いた。感謝する」



 二人が出て行った後も仁は話を切り出さないから、俺が先に口を開いた。



「小春にこれ以上辛い思いをして欲しくないからだ。お前に礼を言われる筋合いなんてない」



 冷やかな口調は明らかに俺への怒りを感じた。


 水野を辛い状況に追いやっているのは事実。


 俺は反発できる立場ではないから頭を下げた。


 この何も動きようがない状況に俺も参っていた。


 突破口を見いだすくれた仁に礼を言うのは筋だと思う。


 屈辱で下げる頭とは違って、感謝しかなく、惨めさも感じない。


 そんな俺の行動に何の感慨も示さず、仁は冷たい口調のまま話を続けた。



「お前の順序を弁えない節操のなさにおじさんたちは怒ってる。それで結婚を認めてもらえる勝算があるのか?」



 正直、頭を下げて結婚を認めてもらうしかない。


 明日は針筵だ。


 恐怖はない。


 何が何でも、明日で結婚の許しを得る決意だ。