「……水野、悪い。お前には本当に悪いと思っている……でもな、俺、嬉しいんだ。水野が困るのわかっているのに、俺は喜びしかないんだ。空でも飛べそうなくらいくらい嬉しくて」
「……榊田君?」
俺は水野の手をぎゅっと握る。
「嬉し過ぎて、水野を慰める言葉も思いつかない」
俺はそれが一番申し訳なった。
ひたすら嬉しいのだ。
水野が俺の子を産む?
数か月前の地獄が嘘のようだ。
水野と出会う前の俺からしたらあり得ない。
本当にこんなに何もかもを手に入れて良いだろうか。
「……私も嬉しいよ。びっくりしたけど、それ以上に嬉しい」
俺の手をぎゅっと掴んだ水野の目は潤んでいた。
薄暗い中でも輝いて俺を魅了する。
俺は何も言葉が見つけられなくて片方の手で水野のお腹を触わる。
何の変哲もないように見えるが、俺と水野の子供がこの中にいるのだ。
溢れて零れ落ちそうな幸せは水野が与えてくれたもの。
本当に諦めずに何年も水野を追いかけて良かったと、暗闇を仰ぎ見た。