『好き』と伝えるのは今でも戸惑う。



 喜ぶのはわかっているが気恥かしくて。


 でも、言うと水野の最高の笑顔が見られるから、頻繁とは言わないが時々しっかりと伝える。


 これから、ずっと一緒に歩いていくんだ。


 そのうち、気恥ずかしさもなく、だけど思いは変わらず言える日が来るのだろう。


 一度良い方向に流れると良いこと尽くめ。


 仕事でも高杉が言った通り、俺の情けない姿が好感を生んでいるというのは本当だった。


 あの時はそんな余裕はなく、気付かなかったが俺のことが気に食わない会社のやつらも多い。


 企画課配属がきっかけだったように思う。


 愛想が良いわけでも、おべっかが使えるわけでもない。


 当然、可愛げもない。


 幸い企画課の中にそんなことを言うやつはいなかったが、女を誑かして企画課の配属を手に入れたとか言われたくらいだ。


 能力も努力も俺より劣っている連中の戯言なんて気にしなかった。


 自分の立ち位置くらいある程度、正確に測れたし、企画課配属だって言わせてもらえば当然と言える。


 これからの伸びしろを含めてだが。


 そんな根拠のない中傷は原動力になることはあれ、マイナスに思うことなんてなかった。


 それがまた、生意気に見えるのだろう。


 そんな太々しい俺が一転、失恋で死ぬほど落ち込んだ。


 俺のギャップに萌えたやつが大勢いた、と高杉さんは宣う。