「………………」



「私の気持ちを仁くんは良くわかっていて、榊田君の話なんて一切出てこなったのに私が榊田君のところに戻りたいって思ったのを私より早くに気付いてた」



 結局、水野の一番の理解者は仁。


 寄りを戻すために必要だったのは仁の説得ではなく、水野の俺への愛情だったわけだ。


 その水野の思いがあったからこそ、仁は後押しをしたのだと思う。



「榊田君のところに戻っても、榊田君は何も言わずに受け入れてくれる。その優しさ甘えて今までと私が変わらないなら、また同じことが起きる。榊田君の気持ちをもっとしっかりくみ取って一番に考えろ、って」



 仁が?


 仁とは思えぬ発言に頭の中は疑問符で埋め尽くされた。



「榊田君の立場だったら嫌だな、って思うことをたくさんして来た。戻らないほうが良いかもとも思った………………」


 だが、話の雲行きが怪しくなり、疑問符を隠されて消えていく。



「昨日買い物に行ってね」



 あの大量の買い物袋か。


 今は部屋の隅っこを占領しているものに目をチラリと向けた。



「色々見たら、榊田君が好きそうとか似合いそうとか、これ食べさせてあげたい、とか考えゃって。そしたら、すぐに会いたくなって。榊田君を待っている間、仁くんが言う通り愛想尽かしていたら、と思うと怖くて。」



 困ったように眉を下げるながら、俺をじっと見つめる。