何とも微妙な気恥ずかしい空気が流れたが、咳払いで謝罪をしっかり口にする。



 「怖い思いをさせて悪かった。頭に血が上って。言い訳みたいだが、仁と仲良くしているのが気に入らなくて」



 「本当を言うとね、あの時を思い出すと怖くて榊田君をずっと意識的に追い払って
いたの」



 俺は背筋を伸ばして水野の次の言葉を待つ。



「でもね、榊田君を思い出すことが多くなって。何やっているのかな、とか気になっちゃって。仁くんはそんな私に気づいて、背中を押してくれたの」



「『好きでどうしようもなく早まったマネをしただけだ。今回限りは許してやれ』って。
それにみんな口を揃えて必死に訴えるんだよ。榊田君が死ぬほど反省しているって。本当にみんな必死で。榊田君は愛されてるな、って笑っちゃった」



 周りに働きかけた意味があったわけだ。


 俺にできることは、同じことを絶対に繰り返えさないこと。


 仁は仁で、俺は俺と唱えて生きていくこと。



「榊田君こそ怒っているよね。勝手なこと言って榊田君のこと振り回して。愛想が尽かされても文句は言えないぞ、って仁くんに脅されちゃった」