「朝からうるさい」



「もう、お昼です!!」



 そんなくだらないやりとりをしつつ、水野の両手にある買い物袋を奪い取り、片手で持ち、もう片方の手で水野の手をしっかり掴んで歩き出す。


 この変わりないやりとりも、この馴染む手を繋いだ感覚も夢ではない。



「…あ、部屋の鍵閉めて来なかった」



「え!?もうどうして、そんなにだらしないの。早く帰らなくちゃ!」


「あんなボロアパートに泥棒が入るわけないだろ」



「そういうところのほうが狙われるんです!!」



 水野は俺の手を引張って、ずんずんと前へと進む。


 そういえば、財布も定期もなく、どうやって水野の家へ俺は行くつもりだったのか。


 まぁ、無計画飛出てきたから、そんなもんだろう。


 ここで水野の手をしっかり掴んでいるのだから、何の問題もない。


 お小言すら本当に愛おしく、抱きしめたいところ。


 だが、こんな場所で抱きしめたら、機嫌を損ねるだろうから我慢だ。