もうわけがわからない。


 現実だと思う。


 確実に現実だと思う。


 この抱きしめた感覚も匂いも、俺の中に広がる、温かさも。


 でも、都合が良すぎるとも思う。


 だから、考えるのは放棄だ。


 夢なら覚めないでくれと強く願いながら、水野の唇を奪う。


 鍵を開けるのも、もどかしくてドアを蹴り飛すように開けて、水野を抱えてそのままべッドに押し倒して、再度唇を奪う。


 強引な口付けに水野は身を捩るが、今の俺に理性も何もない。


 もうわけがわからない。


 水野からマイナスイオンを感じる、なんてバカなことを言って広也たちにバカみたいに笑われたが。


 マイナスイオンが枯渇してしまったから俺は廃人になったんだ。


 水野はマイナスイオンの源泉で間違いなかったじゃないか。


 一刻も早く、少しでも多くマイナスイオンの海に溺れたい。



「ちょっと!!靴っ!!」



 そういえば、抱きかかえて来たから水野は靴を履いたままだった。


 靴をポイポイと脱がして放ると、抗議の声が上がる。



「その靴お気に入りなのに!!」



「うるさい。もっと良いの買ってやるから黙れ」



 抗議の声を再び発するのは予想がついたから、その前に口づけで塞さいでしまう。


 最初、水野は暴れたが、俺の首に腕を回して応えてくれた。


 もう夢でも何でも構わない。


 何が何んだかわからない。


 ただ、ただ、マイナスイオンが欲しくて、マイナスイオンの海に溺れてしまいたい。


 もうそれ以外何も考えられなかった。