「縁結びで有名なところなの。だから、榊田君と一緒に行かないと意味がないの」



「あ?」



 予想外の展開についマヌケな声が漏れた。


 そんな俺には気付かず、水野は話を進める。



「二人でおみくじ引くと、仲良く一年過ごせるんだって」



「……………………」



「榊田君が嫌なら別に良いの。そんなご利益さほど期待してないし、榊田君とご近所の神社でお参りした方がずっと良い」



「……………………」



 こんなことで、俺の虐げられた今日を帳消しにするつもりか。


 俺の怒りを司る脳が具現化して耳元で囁く。


 その通りだ、今年は断固として初詣に一緒に行ってなんかやるか。



「ね?歩きで行ける神社なら良いでしょ?出店はないけど、その代わり榊田君が食べたいものは私が作るから」



 食べ物につられたわけではない。


 何というか、水野のこういう健気さというか、思いやりというか、欲のなさというか。


 とにかく、俺は水野の涙、笑顔だけではなく全てに置いて絶対服従なのだ。


 耳元で囁く俺の一部など、水野に勝てるはずもない。











「……わかった。人混みが多くて、出店がある縁結びの神社なら行ってやる」



 本を放り投げ、布団の上に座り、水野に初めて顔を向ける。



「…え?人混みが嫌なんだよね?ご近所の神社で私は良いの」



「出店がない神社に興味はない」



 ちょっとの静寂の後、水野はぽつりと呟く。