「もうそんな死人みたいな顔ダメ!!小春さんが俊君だってわからないよ。食べて!」



 佳苗の声に、今日の出来事を回想していた自分が引き戻された。


 食欲なんて欠片もない俺など構わず、勝手に注文する。


 こんなに頼んで、持ち帰りにでもする気だろうか。



「小春さんとは仲直りできるから。仁がそう思っているんだから確実。ね?食欲沸いて来たでしょ?」



 姉が弟を慰めるようね目で佳苗は俺を見る。


 こんな姉がいれば、俺のアホでバカな部分も多少マシだったに違いないと思う。


 佳苗の目は少し悪戯染みた輝きがあって、復縁できると本当に思っていることがわかった。


 下手な慰めでも何でもない。



「宮野さんたちから聞いたでしょ、小春さんと会ったこと。あのね、面白いの。宮野さんたちが帰ったあとにね、仁、小春さんにお説教したのよ」



「説教?」



「わかちゃったのよ。二人に俊君の話を聞く表情で。小春さんが俊君のことが好きで仕方のないことが。私たちもわかるくらいだった」



「チャンスはあると思うのか?俺がしてきたことを聞いてもなお」



 佳苗たちの言うように今でも好きでいてくれるのかもしれない。