「下手の同情抜きで、宮野さんの見立てで水野とよりを戻せると思いますか?」
「そうね。あんたの暴力をどう小春の中で処理するかね。ただの一度であっても、これからずっと恐怖に怯えるかもしれない」
「………………」
「本当にバカな男。仁に殺されずに済んだのが奇跡よ。小春のことを想った仁の温情だったのかもね」
「俺と水野が破局さえすれば、仁はとりあえず満足なんですよ。わざわざ俺を殺さなくても。水野の前から消えさえすれば」
俺が水野に近付くことを嫌っていた仁にとって、今の状態は限りなく理想に近いのだと思う。
俺が水野のことを完全に諦めさえすれば、理想とおりというところか。
「あんた、仁のことを誤解している。仁は本当に優しいやつよ。良い男になって小春が戻って来る時に備えたら?私の見立てでは五分五分。でもね、仁は元さやに戻るって確信しているみたい」
「仁が何か言ったんですか?」
「榊田のことをボロクソに言っていただけ。でもね、小春を取られることへの嫉妬に見えたのよね。私も高杉も」
どこまで宮野の言葉を信じて良いのか俺にはわからない。
現実、俺は水野に避けられ続けている。
そうそんなたった一つ。
それが俺をこんなにも打ちのめす。