「小春は小春でも師匠の小春とは別人だと思っていたが、同一人物だと知った時には卒倒しそうになったぞ。なんせ師匠の小春はお前の大嫌いな典型的な女の子だったからな」



【卒倒】の意味を一度広辞苑で調べたほうがいいと本気で思う。



「師匠は私より前から気づいていて。連絡を私がした時には遅いと怒られたな」



「何故、俺に言わなかった?」



 意図的に隠している。


 普段、どうでもいいことを、いや、余計なことをベラベラ話すのに、こんな大事なことを話さないとなると、悪意しか感じない。


 本当は俺を姉貴は嫌っていて、嫌がらせをしているのかもしれない。



「師匠がお前のことを嫌っているのは知っているだろ?お前と小春が付き合えば、小春が泣くことが目に見えていると師匠はきっぱりと言った」



 それは、今現実になっているが、仁はどこまで予見していたのだろうか。



「女遊びが絶えなくて平気で人の気持ちを踏みにじる男には小春は任せられないとな。いや、俊には悪いと思っているんだぞ。しかし、想像できるか?師匠の小春にお前が惚れるなんて。そんな未来を知っていればお前の武勇伝なんて語っていなかったさ」



 言葉とは裏腹に悪気なんて一切感じていない。



「お前の片思いの相手が小春だとわかってからは、師匠を説得したんだぞ。そうでなければ、小春を口説くことさえお前はできてなかったさ。確実に排除されてたぞ」