誠実だと、俺を救ってくれた水野の言葉は思い出せても、はにかむような笑顔は思い出せない。


 水野を思い浮かべても、肩までの短い髪と俺に失望した顔、そして泣いている顔しか思い出せない。


 何故だろうか、あんなに笑顔ばかり見て来たのに。



「さ、榊田?」



「ちょ、ちょっと、あんた……」



 もらった缶ビールをわけもわからず、ぶんぶん振った。


 ぶんぶんぶんぶん振りながら、ダメダメな自分を振り返る。


 行き詰った状況を思い返しながら、ぶんぶんぶんぶん。


 ぶんぶんぶんぶん。


 ぶんぶんぶんぶん。


 ぶんぶんぶんぶん。


 ぶんぶんぶんぶん。



 さすがに腕が疲れて、喉もカラカラでタブに力を入れると。


 中身が噴水のように吹き出し、顔がずぶ濡れ。


 髪からぽたぽたと滴が落ちる。


 ああ、アルコールを振ればこうなるよな、何をやっているのか。


 この間と同じで、この間より情けなくなっている自分に笑うしかなかった。


 「あ、あんたね。危ないでしょ!?かかったらどうしてくれるのよ!?」


 二人して、俺からさっさと離れていたくせに宮野は喚く。