そんな仁に呆れたようにため息を吐いて、佳苗は俺に言う。



「俊君から小春さんに近づかなければ平気だから。小春さんが俊君のところに行くのは仁にはどうしようもできないから。今度こそ、しっかりと待つのよ!ファイト!」



「ふぁいとっ!」



 佳苗は拳を天井へと突き上げ、あかりも同じポーズをした。


 そして、あかりは俺へ指輪の入った紙袋を手渡してくれた。


 その瞳はやっぱりうるうる。


 紙袋を持つ小さな手が瞳と同じで震えていたけど、気付かないふりをして仁の家を出た。


 休みたかったが、どうせ明日になっても元通りになるはずもない。


 噂されるのも時間の問題だし、仕事に打ち込んで気を紛らわしたいと午後から出社した。


 都心となれば大勢の人。


 その中でも今日の俺はかなり目立つ模様。


 周囲が俺を見て、遠巻きにヒソヒソと話している。


 自分のフロアに行くと、やっぱり同じ視線とざわめき。


 無視を決め込み、課長に急な休みを詫びに行く。


 輝かしい真昼の光が輝かしい頭に反射し目を細めた俺に対し、大きく目を開き何か問いかけそうな課長の視線も無視。