「あ、あんた、誰?」



「どうした?その麗しい顔は?」



 月曜日、半休をもらい病院に行くと医者は警察に連絡しましょうか?と尋ねてきた。


 ただの喧嘩で、お互い様なんです、と見栄を張った。


 一方的にボコられたなんて言えるはずもない。


 息もできないほどの痛みは、その瞬間を過ぎれば息はできるようになる。


 しかし、その痛みは二十四時間ついて回る。


 とにかく、身体を動かさなくても痛いし、動かそうものならさらに痛く汗が滲む。


 顔の傷より、腹だ。


 回転地獄蹴りに膝蹴り、どちらも仁の容赦なしの攻撃。


 他のやつだったら間違いなく救急車で病院行き、あばらを折ろうとしたのも嘘ではないのだから、

 仁の水野への愛情は深く恐ろしい。


 そんな仁は俺の帰り際、耳元で囁いた。



「今後、小春に近づくな。今度は殺すぞ」



  それだけ言うと、仁は一人リビングへと立ち去った。