「うまい!小春の味付けは本当に絶妙だ。本当に俺の理想の味付けで、店のと比べようもないほどおいしい。それに、小春がこうして一生懸命作ってくれたことが嬉しい。ありがとう、小春」



「………………」



「仁くんにそう言って欲しくて作ったんだもん!私も嬉しい」



「………………」



「し、俊君。だ、大丈夫?」



「……何が」



 罪のない佳苗を睨む。


 いや、自分の旦那の浮気を放置している佳苗にも罪はある。



「え、え、えっと。な、なんとなく、聞いてみただけ……」



「おい。ガキ。佳苗を睨むな」



「大丈夫!何か、初々しくて可愛いし」



 的外れな発言は相変わらず佳苗らしい。



「こんなのを可愛いなんて、佳苗の感覚が未だに俺にはわからん。ほら、寒いだろ?早くこたつに入れ」



 そう言って、佳苗の肩を抱いて俺をすり抜けていく。


 そのすれ違いざまに、仁はさきほどと同じく、ふっ、と笑い。



「さっきの言葉そっくりそのまま返す。嫉妬は醜いぞ」



 とのたまわった。


 間違いなく、馬鹿にしている。


 怒りに打ち震え立ち尽くすこと、数分。


 いつの間にか、俺に抱っこされていたあかりがいなくて、居間を見ると、仁の膝の上で水野の手料理を食べていて、もう言葉では言い尽くせない何かを感じた。


 そう、何かを。