おいしいご飯も俺へ向けてくれる笑顔も、当たり前になっていて、付き合うまでは貴重なものだと感じていたのに。


 いつしか、それだけでは満足できなくなって、水野に多くを求めるばかりだった。


 俺は水野が何を望んでいるかなんて考えもしなかった、幸せそうに俺の隣で笑っていてくれているから、満足なのだと思って。


 女に選ばせた指輪を持ってプロポーズする俺との結婚を考えられないのも当然なのかもしれない。












「あかり。しっかり、俊お兄ちゃんの面倒を見てあげるんだぞ。間違っても、小春のところに行くことがないようにな」



「……俊君。ごめんね。本当に私と仁で出掛けて大丈夫?やっぱり……」



「行って来いよ。毎月の楽しみだろ。あかりと留守番してる。病院なら明日行く」



 仁の顔を見たくなかった。


 俺を見るその視線が、蔑むその視線から逃れたかった。


 それを察したのか、仁はふん、と鼻を鳴らした。



「俺もお前の顔なんて見たくもない。昔からずっと見たくもなかった」



 一度、毒を吐くと、あかりの頭を撫でながら、いっぱい遊んでもらえと言って佳苗と出かけて行った。