「確かにね。どうして、真に受けちゃったの?小春さんは俊君が好きなの見てればわかるでしょ?ドンと強気に待ってれば良かったのに」
そう、最初は俺のことを好きじゃない、なんて言う言葉真に受けてなんていなかった。
でも、仁と楽しそうに話して、仁に笑いかけている姿を見て、許せなくて。
それと同時に、水野の今までの言葉が嘘のように思えたのだ。
「結局、仁の存在に怯えてとんでもないことをした。これも策略だったのかもしれないな」
「俊君。仁を誤解してる。誰よりも、二人を応援してたよ。小春さんの幸せをかな?」
「……水野の幸せが俺と別れることだとあいつは思ってる」
「小春さんにネックレスをあげたのも、俊君に気付いて欲しくて。月一回、あかりのお世話を頼むのも、二人きりで出掛けることも大事だって見本を示したかったのよ」
「………………」
「小春さんの性格を誰よりも仁は知ってるから、言い出せないのを知ってるから、俊君に気付いて欲しがってたのよ、仁は」
佳苗が言っていることが本当かなんてわからない。
仁は、俺の中でいつでも性悪で、水野を惑わす存在だったから。
それに、今さらだ。
もう、仁に頼むことでしか、水野を取り戻す術はない。