「……俊君。仁の言うことは気にしないで。手当てして、お風呂入って」



「仁の言った通りだと、佳苗も思っただろ?」



 俺の隣に腰を下ろして、佳苗は俺の肩を叩いた。



「そう、重く受け止めないでよ。小春さんのこととなると仁は豹変するから」



「……そういう仁だから、水野は仁を忘れられないのかもな」



「どうして、そう自信なさげなの?俊君らしくない」



 佳苗がわかってないだけだ。


 いつも、不安に感じていた。


 どこかで、俺は仁の身代りなのではと思っていた。


 それを振り払うように、水野に言葉を求め、それでは足りなくて抱くことで不安を打ち消してきた。


 耳元で囁かれる言葉を絶対的に信じることができた。



「佳苗。仁と離婚なんてするなよ。そんなことしたら……」



「もう!俊君、しっかりして!大丈夫だから。ね?」



 酒の入ったグラスを俺に持たせ、飲むように促す佳苗。


 佳苗のこの雰囲気と優しさが心地良い、仁が佳苗と結婚した理由が良くわかる。



「大丈夫。小春さんは俊君のところに戻って来るわ」



「……そういう根拠のないこと言うな。お前だって俺が馬鹿だと思っただろ?」



 もう、ダメだなんてことはわかる。


 嫌われた。


 あんなことをして、戻って来るなんて、どうして言える?