「俺のだ。返せ!」



「値段が高ければそれで平気とか考え兼ねないお前が選んだにしてはやけにセンスが良い。自分で選んだなら大層時間がかかっただろ?もしくは女に選んでもらったか」



 俺の返答などわかっているかのような仁。


 いや、俺が何も言えないのをこいつはわかっている。



「いや、さすがモテる男は違うな。エンゲージリングさえ女に選んでもらうのか!?小春のプレゼントに労力を使うのがよほど惜しいと見える」



「……違う。そんなんじゃない」



 プレゼントだって、決して手を抜いたわけではない。


 水野が望むものが一番喜んでくれると思って。


 エンゲージリングだって、良くわからない自分より目利きな宮野の方が良いのを見つけてくれると思ったからで。


 俺なりに考えた結果だ。


 そう、それは俺なりに考えたに過ぎない。


 仁が言いたいことが嫌というほどわかった。


 テーブルの上を滑らせ、指輪の箱が俺の目の前で止まる。


 水野は俺がエンゲージリングを女に選ばせている姿を見てどう思ったのだろうか?