「それなのに、お前は何も考えもしないで、小春に選ばせるだけ」



「水野が望むものをやるほうが良いと思ったからだ」



「なるほど、それで自分では何も考えなかったのか。俺がプレゼントしたネックレスを小春が大事に身に着けてるの知ってるだろ」



「二人の無神経さが際立つ一品だな」



 恋人でもない女にネックレスをやるのも、それを喜んで身に着けるのも、俺の常識からは考えられない。



「小春、喜んでただろ?どうしてそれを知っているのにお前はやらないんだ?」



「………………」



「お前がやったらもっと喜んでいたかもしれない。知ってるか?友達が身に着けているペアリングを小春が羨ましく思ってたこと」



「………………」



「考えたこともなかったか?小春がそういうの自分からねだれると思うか?ましてお前はネックレスだとか指輪だとかを邪魔くさいって言ってるしな」



「指輪ならやろうとしたさ。水野はそれを突っぱねた」



「エンゲージリングか。そんなのもらったら、お前と結婚しないといけなくなるだろ?ああ、そう言えばこの指輪、自分で選んだのか」



 仁の手には見覚えのある箱。


 自分のポケットを探るとあるはずのものがなかった。