「どういう意味だよ？」



「お前さ、小春に好きだって言った覚えあるか？この三年間、一度もないと俺は予想してんだが、違うか？」



　そう言われると、言った覚えはない。


　最後に言ったのはいつだろうか。


　水野に告白される前ではあるのは確かだ。


　だから、どうしたというんだ。


　片思いの時、ずっと好きだと言い続けてきた。


　それこそ、あいさつ代わりになるほど。



「それが何だって言うんだ。俺に好きだって言って欲しいなんて水野は言わなかった」



　蔑になんかしていない。


　誰よりも一番水野のことを思って大切にしてきた。


　そんな安っぽい言葉では伝えきれないほど。



「何もわからないんだな。女遊びだけはお盛んで、中身はすっからかん。本当に外見だけでモテた馬鹿男」



　確かに、寄って来る女は俺の外見だけなのだろう。


　でも、水野は違う。


　水野さえ、俺の中身も見てくれるならそれで構わない。



「性悪。言い方がまどろっこしいんだよ。水野に振られる要素なんてどこにもなかった」


　仁が好きだと気付いたから、俺を振った。


　そんなことが許されるわけない。


　好きだと囁き、溺れさせておいて。



「振られる要素がどこにもない！？これは大きく出たな。お前の最低ぶりを一晩で語り尽くせるか」



　この数年の鬱憤がようやく話せると、仁は満足げに笑った。