俺は空港へと走る。汗が体から噴き出し、息が荒くなっていく。それでも足を止めることはできない。

そうだ、俺はずっと本当は寂しかったんだ。誰かと本当は、関わりたかったんだ。会ったばかりの上原に見破られていたなんてな……。こんな時なのに笑ってしまう。

俺は、ずっと冷たい人間だと思ってた。でも違ったんだ。ちゃんと上原の前では笑えてた。本当の冷たい人間ではなかったんだ。

また、手紙の内容が蘇る。

私、音無くんに会えて本当によかった。今まで男子って怖い存在にしか見えなかったけど、音無くんが手話を覚えてくれたから、私は考えを変えることができた。すごく嬉しかったよ。
いっぱい、色んなところに行ったよね。本当に楽しかった。手紙だから言えることを話すね?
私、音無くんのことがずっと好きでした。本当は直接伝えたかった。でもこの手紙を見てくれたからいいかな。この告白は、忘れてもらって構わないよ。今まで、本当にありがとう。
                 上原結菜」