音のない君への告白

その日も、俺は授業が終わるとすぐに学校を出る。またいつものように公園で猫と戯れるつもりだ。

「音無くん」

声をかけられたわけじゃないけど、綺麗な声が聞こえた気がして振り向く。胸がキュンと音を立てるのがわかった。上原が俺を見つめていた。

「もう帰るの?」

もうすっかり上原の手話はわかるようになっていた。俺は手を動かす。

「猫と遊んでから帰るつもり」

「そっか」

そう微笑む上原の目は、どこか寂しげだった。何かあったんだろうか。

「どうした?」

俺が訊ねると、「ううん、何でもない」と上原は首を横に振る。そして、いつもの笑顔を見せてくれた。

「引き止めちゃってごめんね。ありがとう」

「大丈夫。またな」

互いに笑って手を振る。上原は今日は委員会があるから公園には来れない。少し残念だが、話せたことでこの気持ちを我慢できる。

俺はいつも通り、公園に向かった。



翌日、俺が学校へ向かうと上原の姿をいつも見る場所で見なかった。珍しい、休みかな?

俺は話せないことを残念に思いながら、下駄箱に靴を入れようとふたを開ける。そしてそこに手紙が置かれているのに気付いた。可愛らしい便箋だ。