音のない君への告白

「どいてくれ!!緊急なんだ!!」

大声でそう言いながら、何とか廊下を通り抜けた。裏庭に走っていく。すると、上原が前田たちに取り囲まれ、壁に押し付けられていた。

「あんたさ、生意気なんだよ!!」

「耳が聞こえないからってチヤホヤされてさ!!」

「おまけにあのイケメンの音無くんと仲良くしちゃってさ〜……」

口々に前田たちが話し、上原は戸惑っている。唇の動きから会話はわかるが、早口で言われるとわからないのだ。

上原が筆談をするためにメモ帳を取り出すと、前田たちはメモ帳を上原から奪って放り投げる。上原は泣き出しそうな目をしていた。俺の中に怒りが生まれる。

「何してるんだよ!!一人に寄ってたかって」

俺が怒鳴りながら上原たちに近づくと、「やだ、音無くん……」と前田たちは頬を赤く染める。ウザい。

「こんな女、一緒にいても楽しくないでしょ?デートなら私がしてあげるから〜」

そう言い、前田は手を伸ばす。その手を俺はすぐに払いのけ、上原に近づいた。