あれから半年が経った。

「雅彦」

私は、雅彦に話しかける。雅彦は、絵を描いていた手を動かすのを止めて私を見た。

雅彦は、短期間でアメリカ人と普通に会話できるぐらいまで成長した。先輩も先生も驚くほどの早さで。

「I study abroad.(私、留学する)」

「え?」

雅彦は、驚いた様子で私を見る。

「why?(どうして?)」

「To study more English.(もっと英語を勉強するため)」

私が英語で答えると、雅彦は「そっか……」と悲しそうに微笑んだ。



あれから数ヶ月。今日は、私がアメリカに行く日。

私は、皆と話をしていた。留学するのは、一年近く。

「……咲」

不意に声をかけられ、私は声のした方を向く。雅彦が、悲しそうにこちらを見ていた。今にも泣き出しそうな表情だ。

「そんな顔すんな。帰って来ないわけじゃない。また会えるよ」

私は、雅彦に微笑みながら言う。そして、一呼吸置いて口を開いた。

「See you(またね)」