授業のチャイムがなると同時に皆は起立をした。
礼をすると月村先生は皆に言った。
「そうそう、聞いてくれ…。今日からクラブ見学してもいいぞ。時間は1時間ほどだけど見に行ってくれ。」
というと、先生は教室を出ていった。
私の席にミヨちゃんが来た。
ミヨちゃんがさり気なく隣りに来て、ちょっと嬉しそうに言った。
「ねぇ、トモは運動部に行くんでしょう?」
「うん、多分行くよ。」
と答えた。
ミヨちゃんは何も言わずにそっとうなずいた。
ちょっと不安そうな顔。
すると後ろの男子のグループの話し声が聞こえてきた。
「渡辺!お前どこのクラブに見学に行くのか?」
と彼らの話声が聞こえてくる。
昨日の自己紹介で、一人一人の名前を覚えるのは難しかった。
が、後ろの席の気になる子だけが渡辺くんとわかっていた。
渡辺くん…。
渡辺くんはクラスの中での友達も多いいほう…。
そして上の小学校から来た子だった。
上の学校は小綺麗な子が沢山いたけど、渡辺くんもその一人だった。
「俺、バスケットにでも入ろうかと思ってるんだ。」
「そうか、お前はいつもマイペースだからなぁ。もう決めちゃったのか?」
彼の少し真剣な表情を見てると心に決めてるみたいだった。
大きな目に黒の詰め襟がまた真っ黒に写った。
遠くからでもわかるくらいに目が大きかった。
きちんとしてる身なりがまた品があった。
そんな渡辺くんが好印象だった。
「ねぇ、トモ、どこの運動部にいくの?」
「そうね…。」
と私は考えるふりをして押し黙ってしまう。
バスケット部か…。
それもいいかもしれない。
渡辺くんが行くみたいだし、私も軽く行ってみようか。
慌てて、机の上にあるプリントと筆記用具をかばんに入れた。
「さぁ、ちょっと見学に行ってみようか」
と彼女が言うと並んで教室を出ていく。
「トモ、私ね。運動部もいいけど本当は吹奏楽部に入りたいの。」
「そうなの。」
と目を丸くした。
「なんの楽器になるかわからないけど、一人で行ってみるよ。じゃあ。」
と軽く手を振って、4階にある教室へと階段を駆け上がっていく。
彼女のさっそうとした態度に急に不安になり、私は慌てて声をかける。
「ねぇ、ミヨ!! 今日一緒に帰ろうよ?」
思わず、急いで彼女の足を止めた。
「えっ。いいよ。終わるのが1時間後だから、その頃に下駄箱の前で待ってるよ。」
と明るく笑って階段を駆け上がっていく。
ミヨちゃんのじゃあねー、という声が少し遠くで聞えた。
彼女を確かめるように見ると、私は階段を降りていった。