「ちょっと、押さないでよ!」
「あんたでしょ!私は空くんのために最前列を取らないといけないの!」
「私だって春希くんを最前列で見るんだから!」
体育館に着いたのはいいんだけど…。
さっきから目の前で行われているギャラリーの最前列争奪戦に呆気に取られる。
空くんも、橘くんも、そんなに人気なんだ…。
分かってる、
そう思ってた。
橘くんはだれがどう見たってかっこいいし。
いつも一緒にいて忘れがちだけど空くんだって負けず劣らずかっこいいし。
…でも、なんだか、二人がとても遠い気がして。
すごい、寂しい…。
「美憂?だいじょうぶ?」
きっと、私が落ち込んだのをあずちゃんはわかってて。
なんで落ち込んだのかまでお見通しな気がする。

