いーなー空くん。
空先輩呼びも、橘くんにこんな愛のある毒吐きされちゃうところも。
はるって、呼んでるところも。
2人は同じ部活だし、同性だし、当たり前って言われたらそうなのかもしれないけど。
うーん、と1人思案に浸っていると、
「美憂〜〜!」
どこからか、私を呼ぶ声が聞こえて、
「あずちゃん!」
振り向けばそこにはあずちゃんが、唯斗くんと手を繋ぎながら立っていた。
2人のことを見て微笑ましくなるけど、私と橘くんの繋がらない手をみて、今更少し悲しくなった。
高望みしないって決めてるはずなんだけど、あの一緒に帰った日を思い出すと、どうしても右手が寂しい。
「本当に大丈夫?」
顔を覗くあずちゃんは、今日も今日とて優しい。
余計な心配、あずちゃんにかけたくない…。
「なんかあったら、俺らのこと呼んでいいからな。……まあ、春希がついてるから平気だと思うけど」
「橘くん、美憂のこと、よろしくね」
……なんか、娘を頼む両親みたい。

