「今更ですけど、先輩3年になってからもこれ使ったりとかしませんか?」




少し心配そうになる橘くんの顔を見て、やっぱりこの人は優しい人だと、そう思った。



「うん!大丈夫!わたし、進路は決まってるから気にしないでもらってね」


「ならよかったです」



進路、か。

なれたらいいな、と思うものはずっとある。

なれるかどうかは別問題だけど。


…なんて、橘くんの前で暗い顔なんてしてたらだめだよね。



「優しいね、橘くんは」

「冷たいの間違いですよ」


「あははっ!そうかも」



たしかに、冷たいままの彼の方が女の子が寄り付かなくていいかも、なんて。

彼の過去を少しばかりでも知っているのに、そんなこと思ってしまう自分に嫌悪感をもった。