15話「もっと泣いて」




 寝不足の顔ではダメだと、少し冷たいシャワーを浴びてから空澄は出掛ける準備を始めた。ほとんど眠れなかった空澄の顔を見て、希海は困った顔を見せながら「大丈夫か?」と、頭を撫でた。それには返事が出来ず、準備してもらった朝食を半分も食べられずに空澄と希海は家を出た。


 昼間に出掛けるのはほとんどなく、買い出しをするくらいだった。いつもならば、仕事に行っている時間なので、少し不思議な気分だったけれど、空澄は緊張の方が勝ってしまい、ただ下を向いて歩いていた。


 「タクシーで向かうか?」
 「………ううん。歩きたい…………」
 「わかった」


 ただ車に乗って居るだけだといろいろ考えてしまうような気がしたのだ。
 2人は昼間の空いた電車に乗り警察署まで向かった。

 その間、空澄と希海の間に会話はほとんどなかった。