「さっきも話したが、呪いで鴉になっていた頃も人間とでは魔力を貯めておける量が違うみたいなんだ。それに魔女として空澄を助けたり結界をつくるためには、これから魔力を沢山使う事にもなると思う。もちろん、空澄に教える時もだ。そのために、俺が自分で貯められるようになるまでの数ヵ月………空澄の魔力を俺にくれないか。………それが俺の条件だ」


 キスが条件だが、その内容は全て空澄を守るために希海が考えた方法だった。
 希海は自分のためではなく、条件まで空澄のためであった。
 そんな条件を、空澄が拒む理由などあるはずなかった。逆に、お願いしなければならないぐらいだった。

 もしかして、キスは彼は嫌なのかもしれない。好きな人以外とキスをするのは、苦痛になるはずだ。彼は空澄のためにキスをするのはどうなのだろうか。
 そんな事を考えているうちに、空澄はドンドン恥ずかしくなってきてしまった。

 けれど、彼が出してきた条件だ。
 希海は良かれと思って提案してくれたのだろう。恥ずかしさを我慢しながら、空澄は彼の方をちらりと見つめた。


 「あ、あのさ………希海は嫌じゃない?………その、私のために嫌々だったらその………申し訳ないし………」
 「空澄は嫌か?」
 「え………そんな事はないよ……だって、希海が私のためにそういう事考えてくれたんだし……その、恥ずかしいとは思うし、いいのかなって考えちゃうけど……希海の力が戻った方が嬉しいから」
 「それはどうして?」
 「希海が使う魔法ってどんな感じなのか見てみたいなって………きっと、かっこいいんだろうなーって思ったの」