「ずっと拘束するつもりはないよ?家族がいたり恋人がいるならそっちに戻ってもいいし……お金は、その………少ししかあげられないけど………」
 「いや、そうじゃないんだ。お金はいらないし、俺は帰る家も家族もいないから……その、ここに住まわせて貰えると助かる。おまえがいいんだったら」
 「もちろん、ここに住むのはいいわ。こんな大きな一戸建てに私一人なんて寂しすぎるし。私も希海が居てくれると嬉しい」


 お金も時間も要望ではないと言われてしまうと、ますます彼の条件がわからない。
 彼は、空澄をジッと見つめた後に空澄の頬に手を添えた。耳の下と首元、そして頬にかけて彼の体温が移ってくる。
 その温かさに驚きながらも安心してしまうのは何故なのだろうか。


 「空澄………また、キスしていいか?」
 「え………何で………」
 「それが俺が希望する報酬」


 キスをお願いされるなんておかしいのはわかっている。それが普通の人ならば、ただキスがしたいからという、甘い囁きになるはずだった。
 けれど、空澄と希海は魔女と魔王。
 キスをする理由が「恋しいから」という理由とは違う目的がある。
 「魔力の譲渡」という理由だ。