「そんな顔をしなくても、おまえを放っておいてどこかにいかないさ」
 「…………そ、そうなの?」
 「魔力の使い方も魔女の仕事もわからないんだから、俺が教えるさ。まぁ、おまえがそれを望むなら、な」
 「…………希海。ありがとう」


 彼が傍に居てくれる。
 それがわかると、空澄は涙が溢れてくるのがわかった。
 咄嗟に俯き顔を隠す。すると、希海は優しく空澄の肩に腕を回し、抱き止めてくれる。


 「頑張ったな……空澄」
 「………っっ…………」


 温かい体温。そして、心地いい声。そして、空澄の気持ちを理解して、受け止めてくれる存在。希海の優しさ。
 それらを感じ、空澄は緊張の糸が切れてしまった。
 
 ボロボロと涙をこぼして、希海の体にしがみついた。
 怖かったし、苦しかった。悲しかった。
 独りになるのが怖かった。
 自分が違うものになるのが恐ろしかった。


 そんな複雑な気持ちを洗い流すのには、時間がかかり、長い間希海に抱きついていた。
 けれど、彼は何も言わずにただただ空澄の背中を擦ってくれていた。

 希海は、全てを知っていて全てを受け入れようとしてくれる。そして、空澄の涙をも………。