空澄は笑顔でそう彼に言った。
けれど、上手く笑えてないのではないかと思った。
ずっと一緒だった海が人間で、それが呪いのせいであり、希海はやっと自由になった。それは良いことのはずだ。
それなのに、空澄は嬉しくなかった。
希海の話を聞く限りでは、空澄が呪文を使った事で魔女としての力が覚醒してしまったのだ。自分が魔女としての1歩を知らない間に進んでしまった。だけれど、これからどうすればいいのか何もわからないのだ。
魔女になったら何をするのか?
それを教えてくれる人がいない。このまま魔女にならずに今まで通りの生活をおくれるのだろうか。それさえもわからないのだ。
希海は母の使い魔。
空澄とはもう何も縁がないのだ。
やっと彼は解放されたのだ。これからは、希海がやりたい事をやって生きるべきだろう。
そう思うのに、隣に座ってくれる温かさや心地よさ。この家に居てくれる安心感。それを知ってしまうと、彼が家から出ていってしまう事を考えると、胸が締め付けられるほど切なくなってしまった。
そんな事を考えていると、希海は空澄を見て困った表情を浮かべながら微笑んだ。そして、大きな手でポンポンッと頭を優しく撫でてくれる。



