空澄は信じられない者を見るように希海を見ると、彼は苦笑した。生まれつき魔力を持つ者は自分が望んでそれを取得したわけではないのだから、珍しいもの見るように言うのはよくないとわかっている。けれど、やはり見たことがない力に対しては、気になって見てしまったり、疎んだり怖がったりしてしまうのが人間なのだろう。
 けれど、彼の表情を見てあまり良い言葉ではなかったと気づき、空澄は咄嗟に「……ごめんなさい。こんな事を言ってしまって」と謝った。すると、「いいさ。仕方がない」と優しく希海は微笑んで許してくれる。
 やはり、彼は優しい。


 「落ち着いたことだし………詳しく話していいか。もしかしたら、空澄が知らない方がいいことかもしれない」
 「………それでも知りたい。知らないといけないと思うの」


 自分が知らないだけで、いろんな事が起こっているのではないか。
 このたった約1日で、想像も出来ない事が起こったのだ。それは、もしかしたら空澄の知らない所で何があったのではないか。そう思ったのだ。
 知らない方が幸せなこともある。確かにそれはそうかもしれない。けれど、そのせいで璃真がいなくなってしまったのではないか。そう思えてならないのだ。

 空澄はジッと希海の深海色の瞳を見つめながら強くそう言うと、彼も真剣な表情で「わかった」と、頷いてくれた。