この世界には、不思議な力を持った人がいる。空を飛んだり、何もないところから水や火などを出したり。そして、現代の科学などでも解明出来ない上質な薬を作ったりも出来る。そんな物語のような魔法使いの存在。そんな人が稀にいる。
 その人たちの事を女性は「魔女」、男性は「魔王」と呼ばれた。その魔女達はひっそりと暮らし、森の中や街中の袋小路、路地裏などに店を持ち、薬などを売って生活をしていた。魔女の力を頼りにしている人も多いが、あまり近寄ろうとはしないのが現実だった。
 特殊で不思議な力を持つものは疎まれ、孤独になる。そう言われていた。

 そのため、空澄も魔女や魔王とは会った事はなかったし、力を見た事も薬を飲んだ事もなかった。だからこそ、都市伝説のように本当に実在するのかと疑っていたぐらいだった。

 けれど、泥水で溺れそうになっていた空澄を助けた魔法や高速移動の魔法を体験してしまうと、それは疑いもないモノになってしまった。


 「本当にいるのね………」
 「そんなに珍しいものじゃないだろ。特に、空澄は」
 「………何で私を知っているの?」
 「まだわからないのか?んー、それはそれで悲しいな」
 「私たち会った事あるの?」
 「そりゃ、もちろん。空澄が生まれたときから、今までずっと知ってる」